
『1-1-9 無題』
無題、名付け難い感情の具現。有るが見えず、見えるが存在を確定し難いもの。
顔はあるが下部は涙型の球体であり、立脚が不能な態である。
存在とは安定して地に着く事だったろうか。もちろん横にしたり転がしたりすれば落着くが、人の顔がある以上足で立つことが基本だと思いがちである。物理的には望ましい形態、常態を思い描く。
しかし、肉体の内部、精神(心理)における形態を推しはかる時、必ずしも重力下において立つという論理は当てはまらない。脳と直結する心理・思考を形に定着することは視覚に保証がないのでどうにでもできる(拡散・抽象)。しかし、あえて凝縮という球形にしている。
閉じている。
心理は走り出すことも飛翔もせず、移動(前後左右)の術もない状態である。思い留まる一刹那の描写かもしれない。
自動的ではなく他動に委ねる・・・自らの発信ではなく外部のエネルギーに依存する態である。
見ること、感じることの振幅は、自己内部ではなく外部(景色・時間空間・歴史)からの熱量に反応する結果かもしれない。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・神奈川県立近代美術館より