『無題』

 地表面、斜面(山)があり、平地に続く緑色に塗られた窪みがある。相似形のものが少し左にズレて並んでいる光景。周囲は区画をの差別化のためか規則的に点(穴)が打たれている。

 領域の意識化だろうか、同じ光景が等しく視野に入るというのは偶然ではなく観察者の見解である。
 時空の変遷(重なり)を二つに分解したのは、長い時間における普遍性の解釈、あるいは認識としての展開かもしれない。緑(樹木)の沈下、大地(山)に眠る緑の相への鎮魂であり、追想である。

 この作品を見て直ちに抱く感想はなく、若林奮の作品の流れをある程度知った上でのプロセス、理解する上での手がかり(メモ)として感受しうるものである。

 具象性を排除した簡潔さは綿密な計算に基づくものであるかもしれないが、風景の情感という現在を透過し、時空を超えた遠方への不確かな眼差しである。
 この不可解な距離(時空)を実測しようと試みている作家の強烈な確執を、わたしは探訪していきたい。

 


 写真は『若林奮ーVALLEYS』横須賀美術館より