
『螺旋のある円盤』
7枚の不ぞろいの紙製円盤、直径は21.6から31.7㎝
遠くから見れば一枚の円盤にしか見えないが、近づけば更に7枚の円盤があり、それぞれぞれに異なる螺旋の形が内包されている。
螺旋の特質として一点に眼差し(視点)を集中させる働きがあるので、7つを同時に確認することは出来ない。
また、7つ(全体)を視野に入れる場合、各螺旋の動向は見られず平板なまま感受される。
つまりこの作品は、鑑賞者の立ち位置によって見え方に相違が出るということである。
7枚が持つ螺旋の形はそれぞれ異なるが一つの丸(円)の中で回るようになっていて円と螺旋の中心は一点に重なる。この意味は円盤の中で繰り返し(運動性)があり、うごめくもの(生命)を錯視する傾向が潜んでいる。
静止している画面に動きの錯視が生じる。
視点の位置や距離によって見え方に想定を超える現象(映像)が生じ、この円盤の焦点を定めることが難しい。換言すると、どこに焦点を置いたらいいのか分からないのである。焦点(中心)は幾つもありながら、絶対的な中心は除外されている。
平面でありながら螺旋という疑似空間をもち、7つの円盤というバランスある構図にして部分しか視点を当てられないという不条理である。
シンプルにして複合的な動きを内包する作品である。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschen.com)より