哀愁がある。
 淋しいほどに、哀しいほどに…愛しいほどに哀愁が漂う提示である。

 旅行者、並べて全ての人がこの世の旅行者である。それぞれ…千差万別の経由。
 タイプライター(言葉)で記録された歴史、そんなものはいずれ無に帰していくに違いない。46億年の歴史を持つ地球のほんの最近発生したと言われる人類の我が物顔・・・笑止、吹けば飛ぶような仮住まい。
 この世に生を受け、わずか100年ほどの旅・・・喜怒哀楽、愛憎の混沌の中、溢れるほどの思いを凝縮し、文字にしたところで何ほどのことがあるだろうか。

『折り畳み品』である、不要なのである。『旅行者用折り畳み品』に見る空漠、わたし達はその空漠を持参して旅をしているのかもしれない。
 旅行者たちそれぞれの経歴、誇らしい履歴も貧相な過去も億年(永遠)という時間の括りの中に霧消していく。

 旅行者は《記録》の概念から自由に解放されるべきである。


 写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschen.com)より