見えないものを描く、浮上させる。それは、どんな技法を持っても表現という見える形にすることは出来ない。

《見えないものを見せる》

 デュシャンの思考回路の鋭敏さにひたすら心服するが、
《見えないものを見せる・・・が、見ようとしなければ永遠に見えない》という問題を鑑賞者に突きつけている。
「どうだ!」と、デュシャンは言って静かに挑戦状の答えを待っている。

『ボトルラック』、鑑賞にも耐える大きさ、祈りの形にも似て宗教的な感性をも呼び覚ます力学的にも安定した美しい形状である。
 しかし、不満足なものであり、場所塞ぎであると判るまでにそんなに時間を要さない必然性に欠けた物である。
 おそらく瞬間的には分からず、使用の過程で目的を欠く物だと実感するに違いない。
 この時間を経て実感するであろう物の正体こそが、デュシャンの黙して示す《見えないもの》である。

《見えないものは見えない》、しかし、問題はここにある。
 デュシャンの提示する挑戦状に鑑賞者は応えなければならない。


 写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschenより)