
明らかに予測のつくものについては上部を画面から切っても良いが、不明なものについては明確に描くことが常道である。
この絵の中心軸は上部の先(終わり)が見えないので、この対象物(チョコレート粉砕機)がどこか高い位置から釣り下がっているようにも見え、この対象物は宙に浮いているとさえ見えるのである。
チョコレート粉砕機は床に着地しているものという思い込みがあるので、不審さはほとんど感じない。
要するにここに論点があるわけで、絵画と鑑賞者の間に介在する観念的な眼差し、約束の見えない呪縛である。欠如は拭われ、作品(絵画)は鑑賞者との間で緩和された成就を果たす。鑑賞者は作家の裏切りに疑惑をもたない。
提示された作品とタイトルを同一視し、鑑賞者は理解をもって肯定する。
つまり作品に、否定(破壊・崩壊)を組み込むことなど想定外なのである。
そしてこの否定が、絵画の領域に対する大いなる肯定につながるという答を導き出している。従来の肯定的な見方を覆す否定を孕んだ作品を提示することで、絵画の領域(プラスからマイナス)を拡げるとともに終結させたのである。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.tauschen.com)より