
粉砕すべきエネルギー源の欠如したチョコレート粉砕機の図である。
動力による回転の圧力による粉砕、さらに言えば効率的な傾斜もついているはずの物を逆の傾斜にして無に帰している。粉砕の役を成し得ない粉砕機の図である。
生産に付随するエネルギー源、形態・重量による移動(位置)圧力の利用の欠如。
《無の報告》である。否、この図から予測される崩壊には、エネルギーの発生が有るかもしれない、むろん有意義に変換利用されることのないエネルギー放射にすぎないが・・・。
絵画の可能性、たとえばローラーに遠近を示す線条を描き入れれば立体(円柱)を明確にする。三個のローラの配置が均等なバランスを保てば、安定感を得る。
・・・というように、書き込むことでより実物に酷似する。
しかし、デュシャンは秘かにもその効能を利用してその効用を削除している。
回転しないローラー、中心から外れた軸はおそらく意味をなさず、回転することはない。
チョコレート粉砕機を描きながら、チョコレート粉砕機の意味を全て否定するという暴挙。チョコレート粉砕機では決して有り得ないのである。
対象物を模して対象物に非ずという亀裂をどう理解したらいいのか。
チョコレート粉砕機≠描かれたチョコレート粉砕機
彩色は茶と黒であり、視覚的眩惑を回避している。
絵画の領域に対する反問、仕掛けられた無為はデュシャンの断捨離、学習してきたもの(観念)への決別かもしれない。
写真は『DUCHAMP』(www.taschen.com)より