
壁に掛けられたフレームの中の絵…これは空想的な実現不可能な天に届く塔の建設ではないか。崩れてしまった「神の門」であるバベルの塔の痕跡。不可能を可能にしようと試みた限りある人智の悟りである。
机の上の果実…これは知恵の実であり命の実と称された命の糧の象徴、燭台の灯りは必ずや尽きるべき命のイメージをも含有している。
初老の紳士(学術経験を熟知)と坐した百獣の王であるライオン、二者は対立ではなく並置(平等)の構図である。
これら人類の歴史を辿る旅は、勝者でも敗者でもなく生命の連鎖を示唆している。
決して届かない神の門への挑戦は掲げられるべき記念碑である。
人類の賢愚混濁の旅の歴史も遥かな未来には、懐かしく懐古される日が来るかもしれない。旅の想い出として・・・。
輝く彩色もなく石化(質的変換)し果てたこの時空は、長い時間を要した人類の旅のプロセスが隠れている。
(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図録より)