媚薬と石化の着衣を結ぶもの・・・恋情である。
 古布を手に取り時代(古)を偲ぶことがある。懐かしい時を経た連鎖の慟哭にも似た心の揺らぎ…。

 この作品の意図は時代の隔絶である。石化の着衣は無機物質であり、背景の朱赤は《血/有機》かもしれない。連綿と続く血の連鎖、地球は幾たびもその風景を変えるかもしれない、それでも・・・切断された時代の継続に、人類に酷似した血を持つ未来人の出現を仮定する。
 有機、生命活動を促すものの存在は、必ずや残存の奇跡に救われ新しい世界を切り拓くに違いない。

 着衣に酷似した石(鉱物)があるとも思えないが、遥か昔、地球と呼ばれていたころを偲ぶ接点としての石化の着衣。

 マグリットの夢想である。未来における現時点への回想を描いたものである。


(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図録より)