木箱の蓋の上に男(紳士)の頭部と鳥の頭部が乗っている。背景は時代を特定しないベタ。
 条件はこれだけであるが、『宝石』と題している。タイトルと具体的に描かれた世界との関連、あるいは答えは宙に浮いたままである。

 宝石…尊いものという観点で考えてみる。
 真(真実)を肯定できないし、善に遠く、美というより恐怖の感が強い。この二物が静止している限りは平和であるが、単に争いがないというにすぎない。不自由この上ない身の置き所は、むしろ拘束そのものである。

 しかし・・・。
 人間と鳥の並置、弱肉強食。鳥は人間を襲い人間は鳥を捕獲するかもしれないが、人間と鳥を同質に図って描いている。だからこそ男と鳥の頭部という部分に限定したのである。(全体を同質に描くのは不可能かもしれない)
 木箱には棺(死)の意味の暗示がある。
 ゆえに、人間と鳥(生物)はすべて等しく《死》の上に乗っており、すべての生き物は死の名において平等である。
 生きるものは等しく同質(平等)な存在であり、優劣なく対峙し得る運命共同体である。
 この意識こそ極めて尊い『宝石』に匹敵、あるいは超えるのではないか。


(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図録より)