
『光の帝国』
空は昼、風景は夜の景、有り得ない光景である。
換言すれば、不自然、自然ではない光景であり、ここは人為的な権力が風景全体の空気を塗り替えているということである。
黒が白、白が黒になるのは自然界には皆無であるが、精神界では起こりがちな風潮である。
帝国…皇帝が統治する国家において皇帝の命令には逆らえず、民衆は従順に首を垂れるのみである。逆心を抱いて生きることは難しい。
抜きん出て高い塔は司令塔のようでもあり、民衆の家々の灯りは仄暗い。点いていない部屋もあるが、家全体が暗く沈み込み見えない家もあるかもしれない。
それに比して街灯の明るさは何かを警戒しているかのようでもある。
不条理、矛盾、帝国に射す光の暗さ。圧制のもたらす重い空気は建屋のひび割れや道の微妙な傾きにも暗示されている。
しかし、帝国の力は自然の光(昼の明るさ)に比べてこのような光でしかない。
昼と夜の対極、自然(宇宙真理)と皇帝(人為的支配)の差異である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)