

この二枚の作品は対になっている。
『禁じられた世界』女性は海の底に沈み深い眠りについている、すでにもう決して現世の自由に戻れることの出来ない永久に眠りである。
『炎の帰還』の紳士は地上を俯瞰している、(世界の中心で愛を叫ぶ)という世界で一番の愛に気づかされたのではないか。
水(冷)と炎(熱)の対比。ここに融和(融解)はない。
男は地上の空気を呼吸し、女は水底で生気の通気を塞がれている。この悲恋・・・。
二人がそれぞれ持つ《バラ》は愛情を、それぞれの頬杖は《深い想い》だと思う。
水は下方に留まるが、炎は上昇する。永久の決別に戻る時間は許可されない。
憶測に過ぎないが、マグリットは父母への想いをこういう形で完結させたのではないか。美しい物語として昇華させたのだと思う。語ることなく秘密裏に二枚の作品に描き分けたのは、息子としての恥じらいだったかもしれない。
(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)