この作品を考えていくと実に不思議な要素を重ねていることが分かる。
 林の奥行があるのに全体平面である。
 林は側面が垂直、上方は建屋の形にカットされている。
 林の樹々には奥行きがあるのに枝葉の茂りは平面である。
 林は前面、周囲の空は後方であるはずなのに、空(空間)の中に林が食い込んでいる、あるいは空間の方が林を抑えて前に出るような接線の描き方である。
 視線は地平線にあるが、見上げているのではなく真正面からの視線に描かれている。
 光の方向が不明である。

 通常の絵の約束(疑似空間)は、ことごとく破られている。つまり現実には決して有り得ない時空を有り得るかに創作したのである。
 自然(物理的)には存在しない光景を敢えて捻出した意図はなにか・・・。
 新しい世界というのではなく、概念の全否定である。

 イメージは学習された情報の集積から発するが、そのイメージに対する疑惑、反感から否定し果てた自由な開放を追及する手立てとしての試作が、不明なタイトルである『エルノシア』なのだと思う。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)