
『完全なる調和』
成熟した女性がありのままの姿(ヌード)で一枚の葉(オリーブ?)を持っている。目は少しそれた方向を真っ直ぐに見つめている。
背後には巨岩石、女と岩は室内にいて、窓外には水平線(真理)と雲が見える。
これらをもって『完全なる調和』と題している。
水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ(『創世記』第1章より)
地から水のひいたのを知った(オリブの若葉)(『創世記」第8章より)
主なる神はとこしえの岩だからである(『イザヤ書』より)
正しい者の道は平らである(『イザヤ書』より)
・・・と、こんなことを想起してしまう。背後にある巨岩石の意味を何と考えたらいいのだろう。
危機、危険は、常に平穏の背後に隠れている、あるいは共にあるということだろうか。開口部(窓/出入口)に対して岩は大きすぎる。岩はやはり精神的なもの・・・神というより不条理を意味するように思う。
彼女が手にしているオリブの葉は、その感じからして何かの誓い「宣誓」という気がする。
あらゆる困難を覚悟しつつも平和と真実(水平線に象徴される)、ありのまま(裸/持たない者は幸福である)の精神を貫くことを誓うという神がかり的な『精神の調和』である。
この緊張感こそが《美》の真骨頂である『完全なる調和』であると。
(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)