炎の帰還・・・タイトルだけ見ると、逆襲あるいは報復を考えるが、男は手にバラを持ち肘をつき手を顎にあてている。戦闘態勢とは真逆である。
 覆面をしているということは、正体を隠しているということであり、誰であってもいい任意(想像上)の人である。
 空中に浮上しているのではないが、街(地上界)を踏破しているのでもない。黒服の着衣に重力を感じさせないのは、精神的な化身としての登場だからかもしれない。

 頬杖を付いているということは留まっているということであり、眼差しは下を向くというより、彼方(未来)を見ている。

『炎の帰還』、シルクハットの魔術師のような男の正体は精神であり風であり、街に再び豊かな活気(愛と平和)をもたらすように送り込まれた使者である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より