
『弁証法礼讃』
家の窓の中に、さらに家があるという景である。
現実にはあり得ない想定であり、非現実的、矛盾、否定がある。
しかし、「それを受け入れて見よ」というテーマに鑑賞者は戸惑い狼狽えてしまう。答えはあるのだろうか・・・。
わたし達はこのような景に出会うことない。物理的に小さな窓の内部にその窓を複数持つ全体(家)が存在する筈がないと経験上認識しているからである。
個から複数の個が増殖していく・・・例えば、細胞分裂などの態には見られるかもしれない。ゆえに比喩として捕らえるならば答えは発見可能である。
しかし、家(建屋)という固定観念はそれ以上の変態を拒否してしまう。わたしたちにとって観念は社会生活における基準である。
個の内部に複数の個を孕むという現象は、生物界においては条理である。時間の経由や歴史的な発展の構図は、明らかにそれを証明する。
眼に見える現象のみを絶対と知覚し、それ以外を受け入れないのは確かに誤りである。
ゆえにこのマグリットの矛盾した家の構造は、否定的ではあるが肯定的見地を含有する複合的な様相を呈しており、礼讃・・・マグリットはこの否定的矛盾を肯定し、否定と肯定のズレを統合する図解を提示したのだと思う。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)