裸体は当然無防備であり、目を閉じていては尚更である。
 両手を挙げているのはどのような意思表示なのだろう。拒否、あるいは迎合、あるいは夢遊状態など考えられるが、きわめて優雅で自然体である。巨大なオサガメさえいなければ、茫漠とした海底(あるいは砂漠)に眠るファンタジーの世界そのものである。

 オサガメの鋭利に見える外殻は何を表象しているのだろう。襲来だろうか、和合だろうか、単に共存なのだろうか。
 二つの生物の関係性はどこに焦点をあてたらいいのだろう。

 床面は厚い板状のものが層になって重なっている。板は死へ移行するときの常套手段であることを考えると、この状況空間は、既に現世を離れた冥界、あるいはその入り口(途中)であるように思われる。
 もはや重力の束縛のない世界、海や砂漠でさえなく、あらゆる観念から解放された世界の融合、共存かもしれない。

 通念を破る暴力、通念の否定、新しい衣服(精神)である。


(写真は新国立美術館『マグリット展/図録より)