『犬から出る水蒸気』

 犬から水蒸気が出るという認識を持ったことがないが、犬の雰囲気、振動する空気感は不確かだけれども感覚としてはないこともない。犬がこちらにやって来るときの空気の揺れ、生命体の持つエネルギーの発散は辺りの空気を攪拌する。
 それが水蒸気なのか・・・犬の生息、即ち有機質の酸化、エネルギーの消費、汗が空気中に気化する確率は不明であるが、確かにエネルギーは水蒸気として発散。溶解していく。

 作品は固形化した泡状の物の上に泡状の突起を持った鉄板が乗り、右端にそれを下方に引っ張り込む取っ手のような物が付いている。
《犬から出た水蒸気(活性の昇華)は、上方あるいは外へ向かうが、周囲の圧(重力)により遠方にまで至ることはなく、しかも周囲の圧は変則であり一定したものではない。》という空気感の物量化(変換)である。軽い(水蒸気)ものを、重い(鉄/金属)ものに置換した表現は、鑑賞者の呼吸を止めるような衝撃と躊躇いがある。


(写真は神奈川県立近代美術館〔若林奮『飛葉と振動』展・図録より》