『VALLEYS』

 VALLEYSは、私的空間、私的視野の物量化である。見えない圧迫、見えない時間、見えないストレスが、小さなつぶやきとなって反響(こだま)するような硬質な両壁である。
 歩く事、前へ進み出ることで微妙に景色が変わる。近視眼的に不連続に現れるそれは、眺望であれば同質(均質)なものとして処理される単純さを有している。

 真っ直ぐに見える道(通路)である。しかし、微妙な凸凹(傷/点描)が、代わるがわる表出する。それは時間であり、自然の営み(経由)であり、私的な履歴でもある。
 彩られることなく不愛想なVALLEYSは閉じている。この谷底は虚空であり、共存を受け付けないように見える。

 しかし、それは(思い込みに過ぎないのだ)とでもいうように、天空へは大きく開き、常に出入口は開け放たれたままである。
 この矛盾こそがVALLEYSの基本構造を成すものである。


(写真は横須賀美術館(若林奮『VALLEYS』より)