『花嫁』

 この作品だけを観て、花嫁を想起できる人は多分いない。どこにも花嫁の要素が無いからであり、単に、どこかで目撃したことがあるような気がするパーツがランダムに設置された構造である。
 凝視すると、描かれた物自体にも関連性が欠如していることが分かる。
 力の方向性が一定でないばかりか、あちこち切断された構造であり、一貫性(生産性)を予期出来ないのである。
 むしろよくここまで重力を無視した構造を考えあぐねたものだと心服するよりほかはない構造である。つまり、そう意図したのである。

 非生産的な設計を名付けて『花嫁』としている。花嫁とはその状況における一時的な呼称であり、花嫁という持続的普遍性はない。換言すると幻であり、本質的な実態はないのではないか。作品とタイトルは、この場合ひどく呼応しており、言葉は活かされている。


(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)