『レデイ・メイドの花束』

 男はこちらには背を向け、森を見ているようである。背中にはボッティチェルリの『春』に描かれた精が描かれている。

 自然回帰・・・何もかも取り払うと、心に秘めた郷愁、愛の理念が胸を過っていく。理想の女性像、ごく一般に知られた有名な妖精、ボッティチェルリの『春』に登場する彼女が浮かぶ。
 もちろん《誰》という個人的な彼女ではなく、大量に複製されたイメージとしての理想像である。

 胸の奥底に潜む不変の恋情、消えることのない異性への思慕。
 異性への恋情を抱き続けることが、即ち男としての原点、郷愁への誘いなのではないか。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)