『絶対の声』

 バラが一輪、【Une バラ一輪 dans l’univers】(宇宙の中の一輪のバラ)という構図。

 今は亡き某評論家が言ったことがある「わたしが書いているのは、ずっと向こう、そうトンネルのような暗がりのずっと遥か向こうに、よく見えないが女の人がいる。その人に向かって書いているだけなんですよ」と。

 自分が探求し続けているものは何なんだろう…世界の指針、拡散し手あたり次第に問い、追及を試みる。
 しかし、実は簡単明瞭、一輪のバラに置き換えることの出来るものではなかったか。神秘に見えて現実であり、美しいが反撃的である。栄枯盛衰、時の流れに逆らわず、ただ在るがままにその輪廻は繰り返される。

 わたし(マグリット)が対峙している世界は、たった一輪のバラに集約されるのではないだろうか。注ぐべき愛情、情熱、真偽を問う道筋に『絶対の声』が聞える。見えることなく聞こえるのみであるが、その導に一輪のバラを置く。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)