『手の力』

 積み上げられた煉瓦の上に城らしき塔がある。出入り口らしい門を基準にしてみると煉瓦は異常なほど大きく、積み上げることは到底不可能なほどの巨大さである。
 城に対する傍らのコップやバラを基準にすると、城は非常に小さく人の出入りなどは望めない代物であるが、逆であればコップやバラはあり得ない相を呈すことになる。
 唯一の絶対は、背後に見える水平線(真理)であるが、それぞれを各々観察するならそれは納得のいく物象である。

 この景は経験においては実証不可能な関係性の並列なのである。相対的に成立不可のそれぞれを同じ時空に収める暴挙・・・それを為し得るのが『手の力』であり、手を通した精神(イメージ)の自由である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)