『完全なる調和』

 女は一糸まとわぬ姿で毅然として立ち、一枚の葉(『大家族』における鳩がくわえて来たであろうオリーブの葉か?)を掲げている。
 背後には巨岩石、窓外は曇りがちの空ではあるが静かな海の水平線(真理)がある。

 これを称して『完全なる調和』と題している。
 自然体の女が抱く一葉は、生命の根源であるエロス(性的な愛)を暗示しているのではないか。背後の巨岩石は、

 わたしのほかに神があるか。わたしのほかに岩はない。(聖書『イザヤ書』より)

 という強い信仰心であり、それを《善》とすれば、水平線は《真》であり、女は《美》である。
 水平線(真理)が微妙に雲に霞んでいるのは大いなる岩が彼女を守っている、あるいは拘束しているせいかもしれないが、この結びつきが彼女の中で完全なる調和を保ち、彼女自身の存在を証明している。
『完全なる調和』は、(完全なる)調和であって、(完璧なる)完全という意味ではないが、『完全なる調和』を保つ彼女の崇高さに敬意・感服を表明したものと思う。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)