
『生命線』
上半身はブルー、下半身は肉体の自然色の成熟した女人の裸体像。
岩の上に手を付いてるが、床な人為的な板張りである。
海と室内を隔てる黒く見える硬質の壁、そこにはライフルが立て掛けられている。
空は澄み切ったブルー。
これらの条件をもって『生命線』と題している。
女に恥じらう風な様子はなく、ただどこか(外界/現実)を見つめている。衒いや虚飾を脱ぎ去り、ありのままの自分に確固たる信念を抱いているように見えるが、岩に手を当て身体を支えている。
わたしのほかに神があるか。わたしのほかに岩はない(聖書『イザヤ書』より)
宗教を心の支えにしている、ということかもしれない。
身体の半分は天空と同じ色(超自然/非現実)、半分は現実の生々しいわたしであり、それを区分するのは水平線(真実)である。
すでに実世界を離れているが、下半身の母胎は離れがたく余韻を残している。
女は室内(世界)に閉ざされているが、外部(世界)に開かれてもいる。
ライフルは攻撃・殺傷を意味し、常に傍らに置いてある。死は至近に在り、覚悟をもって生きている。(あるいは死んでいる)
彼女の眼差しの先は、命との闘いであり『生命線』という決死の不可視の領域である。(亡母へのオマージュをこめた肖像画かもしれない)
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)