『応用弁証法』

 二枚のパネル、左は戦闘態勢であり、右は敗退の景である。
 敵(相手/対象)への攻撃の景は、意気揚々とした軍隊や戦車や戦闘機が描かれている。
 疲弊し敵地を後にあるいは故郷を追われゆく敗北の景には、左半分の景にあるような財力や高揚はない(失われている)。

《戦いとは何であるのか》という命題に対する答えだろうか。世界を虚しく衰退へ追い込むものであるが、闘い取るという体制には活気に満ちた人間の本能がある。
 しかし、生死を賭けた国への従順に個人の意思はなく、任務であり人権を度外視された集団にすぎない。
 右半分に描かれた光景は、所持する財産もなく肩を落とした民の姿である。空は曇天、未来の保証も約束されないが、よく見ると水平線(真理)がそこには厳然とある。打ちひしがれた敗北の民には進むべき開放・自由の未来があるかもしれない。
 少なくとも、死を覚悟した戦闘態勢とは異なる明日が待っている。

 さらに言えば、戦争がなければ、敗北もない。
 この左右の二枚を比較検討した答えは、和解という平和の続行こそが人間の死守すべき約束であり、叡智の極みであるという真実の内在を見出すことではないか。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)