
『透視』
透視画法の点からいえば、遠近法を外している。イーゼルやキャンバスは左からの視点であるのに、卵の乗った台は右上からの視点であるし、画家は真正面から描かれている。視点が一か所に定まっていない不思議な絵(空間)である。
卵を見て成鳥を描く、という超能力の認知も架空であり、イメージの領域である。
あたかも自然、静謐な雰囲気である画室の光景の散逸。
キャンバスはイーゼルに定まっておらず浮いているし、卵もイーゼルからの視点でみれば落下は免れない。
卵・卵を見る眼差し・成鳥・成鳥を描く手、この不可視のサークルが作品の焦点であり、動かし難く強力に鑑賞者を誘引する。
非現実的な光景を現実的な空間だと認識させている。
不可知な光景を肯定せざるを得ない緊迫、鑑賞者は肯定することですでに『透視』を認可しており、いわば、共犯関係にある『透視』である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)