
『人間の条件』
窓外の景色を室内からキャンバスに写生しており、それは外の景色に等しく連続しているに描かれている。
少し斜に、遠近法をもって描かれた室内、窓の両脇にはカーテンが下がっている。光は右から射している。
右側から見ている構図であるのに、三脚のうえのキャンバスにはその視点に重なるように描かれている。この絵の作者の眼差しの方向を問うまでもなく、完全な一致をみることなどは、あり得ない現象である。
つまり、鑑賞者の脳も錯視を受け入れている。現実と現実とのズレを修正しようとする自動的な働きである。
『人間の条件』とは、疑惑とは裏腹に、イメージで現実とのズレ(非現実)を許容してしまう迷走回路を所有しているという点ではないか。
《そうらしいが、違う! 》という断言を声高に叫べず、《そうかもしれない》と曖昧に肯定してしまう(振幅ある)心理こそが、人間の(悲しき)条件であると、暗に仄めかしている。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)