
『言葉の用法』
人体を想起させるような白い空白にcanon/大砲・corps de femme/女の身体・arbre/木という文字が入っている。
背景は暗緑色のベタと赤茶の煉瓦が二分割している。
文字を見て、文字の意味を想起する。しかしこの文字は謎であり、関連性を持たないように思われる。にもかかわらず、この絵の中の情報を何かの形に結びつけようとする作用が働く。
わたしたちは何か物を見るとき、それを当然として見る。つまり疑うことは論外である。
集積された情報は観念として頭の中に整理され、それを基に情景を納得する次第である。
ただその整理されていると思い込んでいる情報の列に不具合がある場合、混乱、混沌の渦に巻き込まれてしまう。
言葉(活字)には強い引力があるが、関係性や意味を認識できない場合、それらは単なる記号(模様)と化してしまう。
『言葉の用法』には、通用を拒む領域もあり、すべての人に約束されたものではなく、言葉のイメージ化には共通の約束された範囲があるということである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)