『恋人たち』

 頬寄せ合う二人…まさしく恋人たちの姿である、しかし布を被せられた二人にはその表情が見えない。
 二人は近しい間柄であり、身体を接近させることを許しあう仲である。ただ必ずしも相手の正体を熟知しているわけではない。
 相手の思考・環境との差異は未知であり、どんな亀裂が待っているかは知る由もない。不穏な空気感、滑り落ちるような背景の斜面、水平であるべき水平線には左右に落差がありわずかに傾いている。

 仮面の下には驚異が待っているだろうか、信ずべき触感の肌触り、恋人たちの愛の行方は未知である。
『恋人たち』、それはドラマの始まりであり、誰も知らない予感のトキメキがある。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)