
『喜劇の精神』
薄っぺらな紙状のものに模様の切込みが点在している。それらは縦方向に折りたたみ対象の形を取っている。どこまでも続く連続模様を予期させるこれらは、遺伝情報の記号化ではないか。つまりこの人型のなかには継続されてきた時間と喜怒哀楽を含む様々な情報がインプットされているわけである。
この人型に刻まれた記号の配列にはもう一つの謎がある。胸の辺りの点を起点として回転しているのである。回転は否定ではない、しかし、この情報群をひっくり返しているということは、ある意味自分を逆さにし曝け出しているということではないか。
しかし、普通に見ては見えず、隠蔽された転倒である。
『喜劇の精神』とは自身を逆さにし裸になることであり、しかもそれを決して見せない悟らせないという覚悟をもつことである。
昇降定かでない体制、安全を約束する壁はなく背後の空間には落下の危険が潜んでいる。
『喜劇の精神』が持つ哀愁、笑いの根源の深さ・儚さを提示している。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)