『一夜の博物館』

 一夜ということは、〈儚い夢のような〉という意味だろうか。
 四つに仕切られている景は、十字を切っているようでもある。
 それぞれ中には《腐った果実》《切り落とされた手》《石だろうか、不定形な硬質な物》《二つ折りにし、人為的に刻まれた穴のある紙(平面状のもの)に隠された空間》と別れて置かれている。

 切り落とされた手…もしあなたの片手または片足が、罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい(『マタイによる福音書』より)
 腐った果実…命の木と、善悪を知る木。「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ、命の木からも取って食べ、永久に生きるかも知れない」『創世記』三章より)
 特定不能な硬質な石のような物…「わたしの像を刻んではならない」と言い、「主なる神はとこしえの岩だからである」(『イザヤ書』より)
 中央を外した位置から相似形に刻まれた透け感のある平板に隠された空間…闇、深淵なる心象。

 これらは、あたかも立体の箱の内部のように見えるが、単純に平面(二次元)でもあり、十字を暗示しているようにも見える。

 観念的に信じ込んでいるもの、そう見えるが決してそうではないもの…真偽のほどは何時か遠い未来において『一夜の博物館』として並べ観覧しうるような歴史の資料となりうるのではないか。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)