『火の時代』

 暗く打ち沈んだ絵であり、『火の時代』にしては明るさが見えない。
 ネイティヴ・アメリカンの眼は瞑想しているのか、眼差しの方向が不明である。
 赤黒い雲、草木一本生えていない岩地(荒地)。

 右手は身体と同じく赤い肌色なのに対し、右手の白色は何を現わしているのだろう。白い方の手の背景は他の背景と微妙に異なっている。
 侵入者たち(開拓民)ではないか、ネイティヴ・アメリカンの敗北はその欠けた(占領された)白い手に表されている。

 暗く打ち沈んだ時空の意味が解析されていく…。
 白い部分(点描?)は白人に占拠されていく(進行形)ことの暗示だと思う。
『火の時代』とはまさしく『怒りの時代』である。憤怒、口惜しさ、先祖への申し訳なさ、失った者、白人に追われた者の哀しみである。
 赤く燃える怒りの炎は膠着し、包み隠した魂(精神/誇り)は形を崩し、敗北(白)を認めざるを得ない状況に、じっと目を瞑り耐えているネイティヴ、アメリカンの悲劇、『火の時代』である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)