
『火の時代』
ネイティヴ・アメリカン(インド人に由来する)の男の手から火のような赤い不定形なものが立ち上がり、その中にやはり不定形な白い球体のようなものが描かれている。
《火》とくれば、原初の時代の元素を思う。
背景に映るのは湖もしくは海《水》であり、岩場《土》である。流れる雲は《風》を現わしている。
つまりは5大元素《火・水・土・風・空》の表記である。(3大元素/火・水・地)→(4大元素/火・水・地・風)→5大元素。
《火・水・土・風・空》のほかに《苦・楽・霊魂》を加えたものがアーユルヴェーダであり、ドーシャ/Dosha(生命のエネルギー)と呼ばれるものであるという。
このネイティヴ・アメリカンの持っている火(炎)の中にあるものは《苦・楽・霊魂》の象徴ではないか。火(物理的現象)と霊魂・苦・楽(精神)をコントロールできるようになった時代ということである。
『火の時代』とは、人類の原初、人類たりうる資格を持った時代の生命エネルギーの根源を描いたものだと解釈する。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)