
『深淵の花』
深淵…一見奥深い山中の谷間という感じであるが、これは身体の中咽喉の奥底…心の深淵であり、精神の闇に咲く花である。
馬の鈴という周囲に知らせるべき合図は、人の心の闇の中で静かに、ある時は外に飛び出すこともある合図…すなわち人間においては《言葉》に換言される。
言葉は《真実・虚偽・噂・伝説etc》あらゆる伝達を可能にする。
『深淵の花』は美しくも醜くも変貌する得体の知れない花であり、咲いたかと思うと消え、消えたかと思うと、永遠の持続性を以て人を支配する特定の困難な奇妙な花である。
人の心に隠れた《業》のような性質をもち、抑えようとしても抑えきれない種々の企みを持って口を開けている、いわば美しい怪物のような謎の花である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)