
『水浴の女』
直線と曲線、ごく単純化された線描である。女は横たわり、こちらを直視している。背後には球体が台の上に乗っている。
女の頭部(トップ)と球体の中心を結ぶ線は水平線に位置を同じにしている。
水平線(地球の重力の方向に直角な線)は、普遍である。その不変の真理に並んだ球体は真理の具現であり、女の主張でもある。
裸婦ではなく着衣であるのは貞節を意味するのだろうか。水浴の女の前をしっかり見据えた主張は明々白々、欠けることのない真実を身を挺して訴えているような感がある。
動かぬ真実、水平線の普遍、『水浴の女』は静かにも強い意思をもって《真理》を主張している。
(水浴)、それは亡母への追悼かもしれない。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)