
『秘められたる音』
ネジ留めされた真鍮板で挟まれた紐の玉、頑丈に上下から抑えつけられ中空に位置している。保護と拘束が重なるイメージであるが、四方の脇は解放されており、取り出し(脱出)は自由である。
重い抑圧をイメージさせる上下二枚の真鍮板は、紐の玉を束縛するような関係ではなく、単に隣接しているにすぎない。
閉じるように見えるが、開かれている。
『秘められたる音』、見えない音の音源はどこにあるのだろう。明らかに静止し見えている物体から音を感じることはない、とすれば紐の玉の中、見えない暗所に秘められたる音源を特定するしかない。
《有るかもしれないし、無いかもしれない》秘められている…人に見せないように隠しているということである。
全体、12.9×13×11.4㎝の比較的小さな物体は、鑑賞者の視覚にすっぽり収まる大きさである。どこにも隠れようがないほどの小さな個体(存在)。しかし、この中に『秘められたる音』があるという。
即ち、これはデュシャン自身の精神であり、どこからも誰からも見えている、チッポケなわたくしではあるけれど、秘められたる音(主義主張)を隠しています。
聞こえますか?聞こえる人もいるかもしれませんが、あくまでわたくしはそれ(音)を隠しております。
(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)