
『ボトル・ラック』
タワーの基本的な構造である。偏って物を加重しても倒壊しない力学的観点から造られている。頑強さを兼ね備え、美しいとさえ言えるこのボトル・ラック。
しかし、ボトルを挿す突起は一見頑強そうに見えるが、一定以上の重さに耐えられるとは考えにくい。力点が貧弱で力の分散がない。
ボトルを空にすると言っても、垂直に倒立させた方がいいし、斜めでは時間がかかる上、衛生的にも問題は残る。(再使用の場合、煮沸が必須)
なるほど便利そうな品物ではある。美しく頑強そうに見える構造…しかし一般家庭で数多の瓶を空にする光景などあるだろうか。しかも突起の接着面はどう考えても脆い。長い時間を要せずに不用品になることは必至。
存在感ある物であるが、存在理由を疑うしかない物である。在る、が無くてもいいし。要らない末路を辿るしかない物を、デュシャンは〈その空無〉に愛着をもって〈自身〉を重ねたものと思われる。
(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)