『旅の想い出』

 石化された室内に立つ男とライオン、壁に掛けてあるのは『オルメイヤーの阿房官』、テーブルのうえには果実と灯ったロウソク・・・。

 わたしたちが感じている《文明》、火の発見、果実に託された《知恵・生命》の象徴、建物(世界)の末路(廃墟)。
 本(学究・進歩)を手にしている紳士の充実した暮らしぶりを伝える着衣、百獣の王として旧態依然のライオン。それぞれ異なる方向を見つめる眼差し。

『旅の想い出』は第三者の眼差しから見た光景である。第三者の眼、それは宇宙における《神意》ではないか。

 超未来における時空から見た(過去の想い出の集約の一片)である。
 生命連鎖、火の発見、強者・弱者の並置、宗教という糧、衣(着衣)食(果実)住(室内)・・・人類が築き上げたと思っている《文明》も、遥かな時間から顧みたなら、このような『旅の想い出』に過ぎないのではないか。
 マグリットの沈思黙考の幻想である。


(写真は『マグリット』東京美術より))