昨日の昼間、お使いから帰ると、近所のA君が障子を外に並べて剥がし終えたところで、障子貼りを始めた様子である。
 思わず声をかけると、
「せめてもの親孝行です」という。
 A君は、息子より少し年上だから40代、ここへ転居してきたころはまだ小学生の男の子で、うちの息子に独楽をくれたりしたこともある。
「娘も高校生になると、もう父親とはロクに口もきいてくれません。今朝も『天気がいいからどこかへ行こうか』と言ったらすぐさま断られました」と笑った。

 車で三十分くらいの距離があるのに、かなりの頻度で実家に来ては日用品の買い出しなどを手伝っている。
「障子を張り替えれば、少しは部屋が明るくなると思って・・・」(なんという孝行息子!)

 高校生の時、陸上選手でいい成績を収めたのに止めてしまったのは、下級生の時にさんざんやらされた上級生への肩揉みやマッサージ、使い走りを、自分が上級生になって下級生にやらせるのは忍びないという理由からだったと聞く。
 茶色のお弁当をからかわれて、「お袋、明日からお握りだけでいいよ」と母親を責めもせず、お握りだけで通した優しい子である。

 立派なお父さんになっても、孝行息子のまま…本当にしんみりする。
 A君、立派な人というのはあんたのことだよ。