
『ローズ・セラヴィよ、何故くしゃみをしない?』
11.4×22×16㎝の小さな鳥かごに入れられた152個の角砂糖型大理石、温度計、イカの甲。
イカの甲は入りきらず頭を出している、つまり開口しているということであり、鳥の逃避を防ぐための容器に、この巨大は無意味である。
鳥かごに収納されたもの全てが無意味であり、関連性を持たない。
大理石も角砂糖型にする意味を見いだせないし、測る意味のない空間に置いた温度計は奇妙な不一致を想起させるだけである。
これらは自然な集合体ではなく、デュシャンの意図による不協和音を奏でる集合体である。
未来への積極的な展望もないし、過去を象徴するものでもない。ただ現存している無為徒労の混在。
ローズ・セラヴィはデュシャンの分身であり、自身に対して「何故?」と問いかけている。
この作品の中のものは無機質というか《生活機能》を持たないものである。つまり《生》を除外されている。『なぜくしゃみをしない?』という問いは《生あるもの》への問いである。
自身の分身である幻(不在)に『生きよ!』と命令している。
この混在・不明の中から抜け出で、「息をせよ」と。
デュシャンは、自身のなかのローズ・セラヴィに『生きよ!立ち上がれ』と命じている。
不在の人間(幻)に『何故くしゃみをしない?』という不条理な問いを投げかけている。生命を持たない無機物質をかき集めても奇跡は起きない。
しかし、それでも問いかける姿勢が、デュシャンの無謀であり意味を拒否した空虚である。
(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)