
『即自的イメージ』
ガラス製のチーズドームに、チーズを描いた絵が額装されて入っている。
チーズドームはチーズを入れる容器である。ゆえにチーズが入っていて然るべきであるが、違っているのは食べることの可能な本来のチーズではなく描かれたイメージとしてのチーズであるという決定的な差異があることである。
チーズの絵は、確かにチーズドームに合致しているように見えるが、実質的な意味を何らもたらさない。本物のチーズの対立物として、偽のチーズが平然と置かれているという通常の精神(観念)を揺るがす作為を長く見つめていられない。なぜなら、この存在に対する反論が立ち上がってくるからである。
『即自的イメージ』、入れるべき容器(チーズドーム)に入るべきチーズ(絵という偽物/イメージ)が確かに在る。この場合、チームドーム自身も絵でありイメージに過ぎないことを忘れがちであるが、ある種暴力的なイメージの合体は、本来の実存から離れている。
この強引さに観念的な感想は太刀打ちできない。通常の意識のエリアには受理しがたいイメージの立ち上がりが、ここにある。
即自的…鑑賞者はその距離を測りかね対峙するのみである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)