
『選集』
山頂に巨大なリンゴ?
リンゴと葉、そして走る馬が一体化している不条理。
馬だけを見れば天を飛翔するイメージであり、リンゴだけを見れば単にリンゴをアップし、葉もオーバーに肥大化させているに過ぎないと思える。
しかしその合体となるとその譲歩は霧消する。
『選集』というマグリットの思惑の結集…知恵の実としての象徴であるリンゴ(果実)の巨大とも思える存在感は、肥大化した葉(虚偽)と、空飛ぶ馬という重力の解放を結びつけている。
山々は青紫色、空は淡い紫色と黄色を交えた雲が水平に広がり、青空と思える領域がくすんだ緑色であるという奇妙な背景は、まさしく想像空間(在りえない光景)である。
決して有り得ない観念化されたイメージを覆す異空間の提示であり、「これはパイプではない」と言ったマグリットの主張を要約したものだと解釈する。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)