近所のアパートに住んでいる高齢の女性、腰がすっかり90度というほどに曲がり、老女然としている。
 
 干し物を取り込もうとしたら偶然彼女を見かけた。買い物帰りらしいが、ため息をつき休み休みの態。すれ違った後ろ姿は明らかに彼女と至近の家の人なのに挨拶を交わす様子もなく遠ざかって行った。

 荷物を地に下ろし、ため息をついている彼女を見て、ためらいなく外に出て彼女に声をかけてみると、
「いいです、もうすぐですから」と言い、荷物を持とうとするわたしを拒んだ。
 それでもと荷物を持つと、それは非常に軽くて、大きく見えたものはティシュの箱を重ねたものだった。
 彼女は「大丈夫ですよ、歩かないと足が駄目になるから」と言い、袋の中から取り出したのは、
「このお人形がわたしの話し相手なんです」という女児のぬいぐるみだった。

「わたしはね、ずっと働いてきたんですよ。最後は缶詰工場でした」と身の上話をし、今は娘さんと暮らしているという。
「もう80才になりましたからね。腰がこんなに曲がるなんて思いもしませんでした」

 そう、誰だって思いがけない道を歩いている。明日がどうなるかなんて想像もつかない道である。

「ここでいいですよ」と言うので荷物を放し、別れた。

「足がね、歩けなくなるといけないので…」
 同じです、わたしもそういう毎日を過ごしています。

 人形が話し相手の老女、わたしもブログが話相手の老女。似たもん同士じゃありませんか。淋しいけど頑張りましょうね。