
『アルンハイムの地所』(写真左)
手前の籠に卵が三ケ、山は岩石の不毛地帯、山頂は鷲の頭を模した形状でありあたかもその羽根を大きく広げたようなイメージになっている。
蒼天、三日月と星が出ている。
鳥状の形態をした山であっても卵を産むことはない。しかしこの関連性、あたかもあり得るような錯覚を抱かせる不条理に(かもしれない)という感覚が過る。
三日月が南中する時刻は昼少し過ぎくらいではないか、とすれば空はまだ明るく星は見えない。空が明るければ、三日月も在るが見えない。
一見、在るかもしれないと思われる光景である。
しかし、全体的にまとまってはいるが、一つ一つの関連性がつながりを見せず、よく見ていくとバラバラであることが判明する。
これは、ルドルフ・アルンハイムのゲシュタルト心理学における世界/解釈ではないか。
世界の混沌、あり得ない不条理、そして崩壊、マグリットはそこに卵が象徴する《過去と未来》を置いたのではないか。(これは抱えていた問いの答えでもある)
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)