
『弁証法礼讃』
きっちりと平面的に描かれた家、窓は内側に開いている。
しかし、少し違っているのは、その部屋の中にもう一つの家があることである。
家は精神に例えられているとして、まず(肯定ありき)である、破綻のないしっかりした構築、外観に不自然さは微塵もないが、外に接する空気(世界)は曇天である。
奇異なのはその中にもう一つ家があり、窓も扉も閉じられたまま灯りさえも漏れていない暗い世界があることである。
窓は開いている。しかし、心の奥底の扉は閉じているという(否定)がある。
(肯定)と(否定)が同時に内在している。
解放と閉塞には大きな差異/対立があるが、その矛盾を由とし保存する弁証法のあり方にわたくし(マグリット)は賛意を表するものである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)