『出現』

 深淵、どろどろの混沌、いわく言い難い暗澹の中に彩色された方形の粒の連鎖で囲まれた漆黒がある。
 深淵が先か、黒の領域が先かは分からないが、とにかく変化の徴候が現れたという景である。

 混沌の中から彩色された中の黒(無)が生じた景色と言っていいかもしれない。彩色(カラー)は光の分解であれば、太陽の存在を確信できる。

 雷が多発していたという原始地球、地殻から多くの物質が海水に溶け出していたという景ではないか。即ち出現である。
 生命の起源について宗教的な神話などはあるが、決定的な解答は未だないという。しかし、《太陽ありき》の混沌から奇跡の星として地球が誕生したことは判明しているし、出現があって、今日のわたしたちが存在しているわけである。

 出現の謎を問い詰めると、究極この不定形な謎のままの条件を提示するしかなく、むしろ決定的な解答かもしれない。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)