人の顔には相がある。幼い子供の無邪気な顔から長い年月を経た老いた顔までそれぞれの相がある。
70歳近くにもなると、一目見ただけでくっきり浮かび上がるものがあり、その人の人となりが知れることがある。
逆に見られているわけでもあるけれど、慎ましやかに目を逸らすことも多い。
真であり善であり美であることは理想であるけれど、そうはいかない世の荒波。辛い洗礼を受けることもあるし、ままならない苦境に耐える人生もある。
それでも確たる信念を貫き通した顔には、真の輝きが宿り、そこはかとない優しさが垣間見える。
ああ、そうだ。不器量なわたし、そういう人を見て襟を正すことがある。
功もなさず徳もないけれど、せめて悪心を持たず、他人の成功に拍手を送る人でありたい。
美貌とは縁がなかったけれど、せめて醜悪な相を刻まないように心して生きていきたい。
すべてのことは「天知る、地知る、我が知る」ことを念頭に、恥ずかしくない相を望んでいる。