
『記念日』
何の記念日なのだろう。部屋いっぱいの巨岩石、部屋が狭小なのか岩石が超巨大なのか、とにかく部屋に等しい大きさの岩石が部屋を占拠している。
部屋は人類の進歩・発展によって完成された人知の結集であり、岩石は太古の昔からのあるがままの体(自然)である。
人知(観念)の中に動かしがたく場を占める岩石(自然/ありのまま)の在りようは、観念と自然の対峙である。
『自然の律』を、人類の発展が征服したように錯覚してはならない。あるいはそうでないまでも、自然(岩石)は人知に等しく存在しているということに気付くべきである。
『記念日』というのは、後日(未来)の思い出とするために刻んだ日である。
未来永劫、自然(岩石)は、人知(人もまた自然の一部である)の中に等しく存在するものであり、共存の約束を守るべきである。
《この記念日を胸に刻んで忘れることのないように》、マグリットの表明である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)