足腰弱く、老人の体を兆している。
それにも増して身体の内部、脳の劣化は恐ろしいものがある。
記憶が薄れるというのではなく、記憶することが困難になっている。《すぐに忘れる》この傾向が著しく、今のことがまるで無かったことのように霧消してしまう。
覚えていられない。
たとえば、マグリットの作品の感想を書いていて、書き終わると何を言ったのか思い出せないのである。だから同じような感想をいくつも書き連ねているのではないかと不安になるけれど、害になるわけではないし、と妙な見地から突き放して考えている愚。
日常生活ではもっと顕著かもしれない。同じ製品を積み重ね、老眼ゆえに賞味期限を確認できず、大雑把な記憶で片づけている。
廉価、安価、特売につられて購入した類だから一刻も早く処分しなければならないのに、片隅に追いやられた食品の数々。缶詰など・・・いくら何でもというものを眺めてはため息をついている愚。
愚、愚・・・まったく記憶の衰えには逆らえない。「お化けが怖い」っていうけど、「自分が怖い」昨今のわたし。